二枚舌

 二枚舌で有名な彼女はまたあちこちで僕に言うのとは違うことを言っているみたいだった。

 舌だからということでもないのだろうけれども、食べ物に対する感想も、ころころと変わる。前につくったら美味しいと言って食べていたお好み焼きも、昨日は美味しくないといって半分残した。材料もソースも変えていないのに。

 今日も、以前お気に入りだといっていた店に食事に来たのに、サラダをかき混ぜながら「イマイチね」なんて呟いている。

「味覚が変わったんじゃない?」

 聞いてみたら、彼女は首を傾げた。

「そうかもしれない。また一枚、増えちゃったみたいなの」

 そう言うと彼女は、僕に向かって大きく口を開けてみせた。

(完)

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