2025-09

500字小説

ドミノの時代

 レとファとラとシの音が出ない世の中になって、どれくらい経つだろう。  はじめはレの音だった。それはほんのちょっとした変化で。耳聡い幾人かが、何だか不便になったな、と。そう思うくらいのものだった。  そのうちファの音を耳にしな...
未分類

 シャツの肘に穴が開いた。  長年愛用していた一着だったので、そろそろ寿命だろうとは思っていた。仕方がない、これはもう捨てるかと考えつつ、今日のところは繕って対処しておくことにする。  針と糸を準備して、気がついた。この擦り切...
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その他多数

 その他多数には名前がない。  厳密にいえばあるのだが、それはその他多数にとっては名前ではない。その他多数が求めている名前というのは今持っているそれとはまた別のものだ。  X県のある郡では園田姓が十割を占めるという。親戚遠戚で...
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二枚舌

 二枚舌で有名な彼女はまたあちこちで僕に言うのとは違うことを言っているみたいだった。  舌だからということでもないのだろうけれども、食べ物に対する感想も、ころころと変わる。前につくったら美味しいと言って食べていたお好み焼きも、昨日は...
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頭蓋骨を捜せ

 人間の骨格を求めて襲来した火星人は、手始めに頭蓋骨を奪っていった。  突如頭蓋骨を失った人間たちは驚き慌てた。転んだり、凍らせた豆腐の角にぶつけただけで脳が潰れてしまうのだ。そそっかしい者から順に命を落としていった。島国のとある都...
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